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退職金は、長年勤めた会社を離れるときに受け取る大切な資金です。しかし中小企業に勤めている方の中には「自分の退職金はどのくらいもらえるのだろう」「そもそも退職金制度はあるのか」と不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、中小企業における退職金の相場を勤続年数別・退職理由別にわかりやすく解説します。大企業との違いや退職金制度の種類、計算方法、税金についても取り上げますので、退職や転職を検討している方はぜひ参考にしてください。
中小企業の退職金制度の現状
まず押さえておきたいのは、退職金の支給は法律で義務付けられているわけではないという点です。退職金制度を設けるかどうかは各企業の判断に委ねられています。
厚生労働省の「就労条件総合調査」によると、退職金制度がある企業の割合は以下のとおりです。
- 従業員1,000人以上の企業:約90%以上
- 従業員300〜999人の企業:約85%前後
- 従業員100〜299人の企業:約80%前後
- 従業員30〜99人の企業:約70%前後
企業規模が小さくなるほど退職金制度の導入率は下がり、中小企業では約3割の企業に退職金制度がないことがわかります。自分の会社に退職金制度があるかどうかは、就業規則や退職金規程で必ず確認しておきましょう。
中小企業の退職金相場【勤続年数別】
東京都産業労働局の「中小企業の賃金・退職金事情調査」のデータをもとに、中小企業における退職金の相場を勤続年数別にまとめます。ここでの中小企業とは、従業員10〜299人の企業を指します。
自己都合退職の場合(大学卒・モデル退職金)
| 勤続年数 | 退職金の相場 |
|---|---|
| 3年 | 約24万〜30万円 |
| 5年 | 約44万〜55万円 |
| 10年 | 約115万〜130万円 |
| 15年 | 約210万〜240万円 |
| 20年 | 約350万〜390万円 |
| 25年 | 約500万〜560万円 |
| 30年 | 約650万〜720万円 |
| 定年(35年以上) | 約800万〜1,100万円 |
会社都合退職の場合(大学卒・モデル退職金)
| 勤続年数 | 退職金の相場 |
|---|---|
| 3年 | 約38万〜45万円 |
| 5年 | 約60万〜75万円 |
| 10年 | 約150万〜175万円 |
| 15年 | 約270万〜310万円 |
| 20年 | 約420万〜470万円 |
| 25年 | 約590万〜660万円 |
| 30年 | 約750万〜830万円 |
| 定年(35年以上) | 約900万〜1,200万円 |
自己都合退職と会社都合退職では、同じ勤続年数でも20〜40%程度の差が生じるケースが一般的です。会社都合退職のほうが高くなるのは、退職者の意思によらない退職であるため、より手厚い金額が設定されているためです。
高卒の場合の目安
高卒の場合は、大学卒と比較して同じ勤続年数でもやや低い水準になることが多いです。ただし、入社年齢が若い分、定年まで勤め上げた場合の勤続年数が長くなるため、定年退職時の金額は大卒とそこまで大きな差にならないケースもあります。
- 高卒・自己都合・勤続10年:約100万〜115万円
- 高卒・自己都合・勤続20年:約300万〜350万円
- 高卒・自己都合・勤続30年:約580万〜650万円
大企業と中小企業の退職金を比較
中小企業と大企業の退職金には、かなりの開きがあります。以下は大学卒・定年退職のケースでの比較です。
| 区分 | 退職金の平均額 |
|---|---|
| 大企業(従業員1,000人以上) | 約2,000万〜2,500万円 |
| 中企業(従業員300〜999人) | 約1,200万〜1,800万円 |
| 小企業(従業員30〜299人) | 約800万〜1,100万円 |
大企業と中小企業では、定年退職時に1,000万円以上の差が出ることも珍しくありません。この差は主に以下の理由から生じています。
差が生まれる理由
- 基本給の違い:退職金は基本給をベースに算出されることが多く、基本給が高い大企業ほど退職金も高くなる
- 退職金制度の設計:大企業はより手厚い退職金制度を設けていることが多い
- 支給倍率の違い:勤続年数に応じた支給倍率が大企業のほうが高く設定されている場合がある
- 企業年金の有無:大企業では退職一時金に加えて企業年金制度を併用しているケースが多い
ただし、中小企業でも業績が好調な企業や、長年にわたって人材を大切にしている企業では、大企業に引けを取らない退職金を支給しているところもあります。
退職金制度の種類
退職金制度にはいくつかの種類があり、中小企業では以下のような制度が多く利用されています。
退職一時金制度
最も一般的な退職金制度です。退職時にまとまった金額を一括で受け取る形式で、中小企業の退職金制度の中心的存在となっています。
企業が社内に退職金の原資を積み立てておき、退職時に支給します。メリットは制度がわかりやすい点ですが、企業の経営状況によっては支払いが困難になるリスクがあります。
中小企業退職金共済(中退共)
中退共は、中小企業のための国の退職金制度です。企業が毎月の掛金を中退共に納付し、従業員が退職したときに中退共から直接退職金が支払われます。
中退共の特徴
- 掛金は月額5,000円〜30,000円の範囲で設定可能
- 掛金は全額損金算入できる(税制上の優遇)
- 新規加入時に国から掛金の助成がある
- 企業の経営状況に左右されず退職金が支払われる安心感
- 中小企業の約40万社以上が加入
中退共は中小企業にとって導入しやすく、従業員にとっても確実に退職金を受け取れるメリットがあるため、多くの中小企業で採用されています。
確定給付企業年金(DB)
企業があらかじめ退職後に受け取れる年金額を決めておく制度です。運用リスクは企業側が負うため、従業員にとっては将来の受取額が見通しやすいメリットがあります。
ただし、企業にとっては運用成績が悪い場合に追加拠出が必要になるリスクがあり、中小企業での導入率はそこまで高くありません。
確定拠出年金(DC)・企業型
企業が毎月一定額の掛金を拠出し、従業員が自ら運用商品を選んで運用する制度です。いわゆる「企業型DC」と呼ばれます。
確定拠出年金の特徴
- 掛金の上限は月額55,000円(他の企業年金がない場合)
- 運用成績によって受取額が変わる
- 運用リスクは従業員が負う
- 転職時にポータビリティがある(次の会社や個人型iDeCoに移換可能)
- 企業にとっては拠出額が確定するため、財務負担が見通しやすい
近年は中小企業でも確定拠出年金を導入する企業が増えています。特に転職が一般的になった現在、ポータビリティがある点は従業員にとって大きなメリットです。
特定退職金共済
商工会議所や商工会、一般社団法人などが運営する退職金共済制度です。中退共と同様の仕組みで、業種や地域ごとに運営されています。中退共との併用も可能なため、両方に加入して退職金を積み増している企業もあります。
退職金の計算方法
退職金の計算方法は企業によって異なりますが、代表的な方式をいくつか紹介します。
基本給連動方式
最も伝統的な計算方法です。退職時の基本給をベースに、勤続年数に応じた支給倍率を掛けて算出します。
計算式
退職金 = 退職時の基本給 × 支給倍率 × 退職事由係数
計算例
- 退職時の基本給:30万円
- 勤続20年の支給倍率:15.0
- 自己都合退職の係数:0.8
30万円 × 15.0 × 0.8 = 360万円
定額方式
勤続年数に応じてあらかじめ決められた金額を支給する方式です。基本給の金額に関係なく、勤続年数だけで退職金が決まります。
例
| 勤続年数 | 自己都合 | 会社都合 |
|---|---|---|
| 5年 | 50万円 | 70万円 |
| 10年 | 120万円 | 160万円 |
| 20年 | 350万円 | 430万円 |
| 30年 | 700万円 | 800万円 |
ポイント制
近年増えている方式で、勤続年数や職位、人事評価などに応じてポイントを付与し、退職時の累計ポイントに単価を掛けて算出します。
計算式
退職金 = 累計ポイント × ポイント単価 × 退職事由係数
計算例
- 累計ポイント:500ポイント(勤続20年)
- ポイント単価:10,000円
- 自己都合退職の係数:0.8
500 × 10,000円 × 0.8 = 400万円
ポイント制は成果や貢献度を退職金に反映できるため、公平性が高いとされています。
中退共方式
中退共に加入している場合は、毎月の掛金と加入期間によって退職金額が決まります。中退共のウェブサイトで退職金額のシミュレーションが可能です。
掛金月額10,000円の場合の退職金目安
| 加入期間 | 退職金額 |
|---|---|
| 5年 | 約60万円 |
| 10年 | 約126万円 |
| 15年 | 約199万円 |
| 20年 | 約278万円 |
| 25年 | 約364万円 |
| 30年 | 約458万円 |
掛金が多ければ当然受取額も増えます。たとえば掛金月額20,000円であれば、上記の約2倍の退職金が見込めます。
退職金にかかる税金の基礎知識
退職金を受け取る際には税金がかかりますが、通常の給与所得よりも税制面で大きく優遇されています。
退職所得控除
退職金には「退職所得控除」という大きな非課税枠があります。
| 勤続年数 | 退職所得控除額 |
|---|---|
| 20年以下 | 40万円 × 勤続年数(最低80万円) |
| 20年超 | 800万円 + 70万円 ×(勤続年数 − 20年) |
具体例
- 勤続10年の場合:40万円 × 10年 = 400万円
- 勤続20年の場合:40万円 × 20年 = 800万円
- 勤続25年の場合:800万円 + 70万円 × 5年 = 1,150万円
- 勤続30年の場合:800万円 + 70万円 × 10年 = 1,500万円
- 勤続35年の場合:800万円 + 70万円 × 15年 = 1,850万円
退職所得の計算
退職所得控除を差し引いた後、さらに2分の1にした金額が課税対象となります。
計算式
退職所得 =(退職金の額 − 退職所得控除額)× 1/2
計算例:勤続20年で退職金800万円の場合
退職所得控除:40万円 × 20年 = 800万円
退職所得:(800万円 − 800万円)× 1/2 = 0円
この場合、退職金800万円に対して税金はかかりません。
計算例:勤続25年で退職金1,500万円の場合
退職所得控除:800万円 + 70万円 × 5年 = 1,150万円
退職所得:(1,500万円 − 1,150万円)× 1/2 = 175万円
この175万円に対して所得税と住民税がかかります。中小企業の退職金相場であれば、退職所得控除の範囲内に収まり、税金がほとんどかからないケースも多いです。
退職所得の受給に関する申告書
退職金を受け取る際には「退職所得の受給に関する申告書」を会社に提出することが重要です。この申告書を提出すれば、適正な税額が源泉徴収され、原則として確定申告は不要になります。
提出しなかった場合は、退職金全額に対して一律20.42%が源泉徴収されてしまいます。確定申告をすれば還付を受けられますが、手間がかかるため必ず申告書を提出しましょう。
退職金がない場合の対策
中小企業に勤めていて退職金制度がない場合や、退職金が少ないと感じる場合でも、自分で老後資金を準備する方法はいくつかあります。
iDeCo(個人型確定拠出年金)
自分で掛金を拠出し、自分で運用する私的年金制度です。
- 掛金が全額所得控除になる
- 運用益が非課税
- 受取時にも退職所得控除や公的年金等控除が使える
- 月額5,000円から始められる
- 会社員の場合、掛金上限は月額12,000〜23,000円(勤務先の年金制度による)
つみたてNISA・新NISA
投資信託などを非課税で積み立てられる制度です。
- 新NISAの「つみたて投資枠」は年間120万円まで非課税
- 「成長投資枠」と合わせて生涯投資枠1,800万円
- いつでも引き出し可能なため、退職前後の資金としても活用しやすい
個人年金保険
保険会社が提供する年金商品で、毎月一定額を積み立て、将来年金として受け取る仕組みです。
- 個人年金保険料控除の対象になる
- 元本保証型の商品もある
- 保険機能が付帯している商品もある
預貯金・財形貯蓄
最も確実な方法として、毎月コツコツ貯蓄する方法もあります。勤務先に財形貯蓄制度があれば、給与天引きで自動的に積み立てられるため、貯蓄が苦手な方にもおすすめです。
複数の手段を組み合わせる
退職金がない場合や少ない場合は、上記の方法を複数組み合わせることが効果的です。たとえば、iDeCoで月額23,000円、新NISAで月額30,000円を積み立てれば、年間約64万円の資産形成が可能です。20年間続ければ元本だけで約1,280万円になり、運用益を含めればさらに大きな資産を築くことも期待できます。
退職金を増やすためにできること
現在の職場で退職金を少しでも増やしたい場合に取れるアクションもあります。
勤続年数を意識する
退職金は勤続年数に大きく連動します。特に退職金の支給倍率は勤続年数が長いほど急カーブで上がる設計が多いため、あと数年で大きく増えるタイミングがないか確認してみましょう。
退職金制度の内容を確認する
自社の退職金規程を読み、どのような計算方式か、ポイント制であればどうすればポイントが増えるかを把握しておくことが大切です。
転職のタイミングを見極める
転職を考えている場合は、退職金の支給条件をよく確認しましょう。「勤続3年以上で支給」といった条件がある場合、あと数か月で条件を満たすのであれば、時期を調整することも選択肢です。
入社前に退職金を確認する方法——転職先の退職金で後悔しないために
転職活動中に退職金制度について確認する人は意外と少ないですが、退職金は生涯収入に大きく影響する重要な要素です。ここでは、転職先の退職金制度を事前に確認するための具体的な方法を紹介します。
求人票から読み取れる情報
求人票には退職金制度の有無が記載されていることが多いですが、具体的な金額や制度の詳細までは書かれていないのが一般的です。それでも、以下のキーワードに注目することで、おおよその制度内容を推測できます。
- 「退職金制度あり」:制度は存在するが、金額や計算方法は不明。面接や内定後に確認が必要
- 「確定拠出年金あり」:企業型DCを導入している。掛金額を確認しよう
- 「中退共加入」:中小企業退職金共済に加入している。安定した退職金が期待できる
- 「退職金制度なし」:退職金がないため、その分の基本給や他の手当で補われているか確認する
面接・内定後に確認すべき5つの質問
退職金制度の詳細は、面接の逆質問や内定後の条件確認の場で聞くのが効果的です。以下の5つの質問を参考にしてください。
- 「退職金制度の種類は何ですか?(一時金・確定拠出年金・中退共など)」
- 「勤続何年目から退職金が支給されますか?」
- 「退職金の計算方法を教えていただけますか?(基本給連動・ポイント制など)」
- 「自己都合退職と会社都合退職で金額に差はありますか?」
- 「中途入社の場合、勤続年数のカウントはいつからですか?」
特に5番目の質問は見落としがちですが、試用期間が勤続年数に含まれるかどうかで、退職金に数十万円の差が出ることもあります。
年収だけで転職先を選ぶ落とし穴
年収500万円で退職金制度がない企業と、年収450万円で退職金制度が充実している企業では、どちらが「お得」でしょうか。
仮に退職金ありの企業が勤続20年で400万円の退職金を支給するとすると、年あたり20万円の上乗せがあるのと同じです。年収差の50万円と比較すると一見不利に見えますが、退職金には退職所得控除による税制優遇があるため、手取りベースで見ると差は大きく縮まります。
さらに退職金は一時金として受け取れるため、住宅購入の頭金やセカンドキャリアの準備資金として活用しやすいというメリットもあります。転職時には、目先の年収だけでなく**「生涯手取り額」**の視点で比較することを強くおすすめします。
前職の退職金を「持ち運ぶ」方法
前職で確定拠出年金(企業型DC)に加入していた場合、転職先にも企業型DCがあれば資産を移換できます。転職先に企業型DCがない場合は、個人型のiDeCo(イデコ)に移換することが可能です。
注意すべきは、退職から6か月以内に移換手続きを行わないと、資産が国民年金基金連合会に自動移換されてしまう点です。自動移換されると、運用がストップし、毎月管理手数料が差し引かれ続けるという大きなデメリットがあります。転職が決まったら、退職金(確定拠出年金)の移換手続きを忘れずに行いましょう。
退職・転職時に合わせて読みたい記事
退職金の確認と合わせて、以下の記事も参考にしてください。
- パート・アルバイトの退職届の書き方を徹底解説!テンプレート・例文付き:退職届の書き方やマナーを解説しています。退職金を受け取るためにも、正式な手続きを踏みましょう。
- 転職で年収ダウンして後悔…年収が下がるパターンと回復させる方法:転職時は退職金だけでなく年収全体で判断することが重要です。年収ダウンのリスクと対策を解説しています。
- 退職の引き止めの断り方|パターン別の対処法と具体的な例文:退職を引き止められた場合の断り方を解説。退職金をしっかり受け取って退職するための心構えにも。
まとめ
中小企業の退職金相場は、大学卒・自己都合退職の場合、勤続20年で350万〜390万円程度、定年退職で800万〜1,100万円程度が目安です。大企業と比較すると金額差はありますが、退職金制度の種類や仕組みを理解し、必要に応じて自助努力で資産形成を行うことが重要です。
退職金の有無や金額は、転職先を選ぶ際にも大切な判断材料になります。退職金制度の内容は企業によって大きく異なるため、就業規則や退職金規程を事前に確認し、将来のライフプランに合った選択をしていきましょう。
退職金にかかる税金は優遇措置が大きいため、中小企業の退職金相場であれば税負担はそれほど大きくならないケースがほとんどです。退職時には「退職所得の受給に関する申告書」の提出を忘れずに行い、適正な税額での受け取りを確実にしてください。